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知識革命の時代

知識革命の時代    2008/06/04


近時、企業経営を動かす機軸は、ファイナンスに由来する手法にあります。これは90年代以降、米ソ冷戦終結後の世界の枠組みの創造  ――グローバリゼーションの実現に向け金融工学を背景に米国で開発され戦略的に定着していったもので、以後の世界の経済・経営はそうした新しいメカニズムによって動いているのが実情です。他方、インターネットは本来、米国の軍事機密で冷戦終結後に民間に開放されましたが、それによって世界が一大変革を遂げたことは周知の通りです。米国主導のグローバリゼーションは、そうした技術革新と知識革命、さらに米国の諸外国への政治圧力――わが国では金融ビッグバン以降、一連の改革(会計制度、司法制度、税制その他の米国制度への統一化)要求に応えた――があいまって我々の置かれた状況を一変させました。

こうして変貌を遂げたパラダイムの下、我々自身が従来と何等変わらない、あるいは手立てを持たないために、今日的状況において何が起きているかを読み取れず、ないしは対応を誤り様々な場面でミスマッチが生じているように思われます。たとえば、経営においても同様のことが言えます。かつては、「黒字」でありさえすれば十分でした。経済が右肩上がりの時代には黒字の中身までは求められませんでした。すなわち、“経験と勘のみの経営”がまかり通ったのが、かつての時代でした。


しかし90年代以降、それが一変しました。黒字か否かよりも、その中身、つまり、収益性とその源泉が重要視されるようになり、同時に、資本の効率性と機会費用に着目した経営が定着して行きました。ソニーやトヨタといった企業の経営者は、「利益」よりも大事なものがあるという考えが普通です。もはや、かつてのように「利益」といった単純な概念での経営の舵取りは行われなくなり、より科学的な経営の認知が深まっていきました。その変貌ぶりと人々の認識とをたとえるならば、「明治維新を迎え鉄道が通る時代に、草鞋を編み籠を担ぐことの時代錯誤をなんら疑問視しない」、かのようなものに映りますそれは、機軸に関する知識の伝播―すなわち、知るか知らないか―に起因するものです。リチャード・セイラー等が「行動経済学」において唱えた“人間の非合理的行動に関する仮説”がグローバル資本主義の名の下で実証されようとしています。覇権が米国へ移った先回のイノベーションの特徴が18世紀後半~19世紀中葉の産業革命を通じて眼に見えた変革であったのに対して、このたびのそれは言わばバーチャルな変革であるために、そうした歪が大きく様々な形でノイズとバイアスが生じています。

そうした点に着目したのが、世情を騒がせた「村上ファンド」や「ライブドア」の買収劇でした。資本の非効率性ゆえのターゲットが「ニッポン放送=フジテレビ」であったわけです。資本にもコストがあり、それを超える収益が得られなければ株式の価値は下がります。さらに資本は特定の国に帰属することなく、瞬時に世界中を駆け巡る性質があります。国境の概念が希薄化するなか、世界中からやって来た資本は、かつての概念を超越して動きます。――「株主の資本を無駄にするな」と、もの言う株主の洗練された論理がわが国で受け入れられることはありませんでした。これは、世界を動かす機軸との対峙を意味します。

非公開のオーナー企業や個人の事業者であっても同じことです。非効率であることは、その分資本が無駄に働いていることを意味します。株価算定の結果、簿価を割る状態にあっては、黒字であること自体なんの価値もありません。グローバル企業とドメスティック企業との間で二極化が進んでいる現在、機軸に起因するそうした趨勢は(いまのパラダイムが変わらない限り)さらに拡大していくものと考えられます。多くのケースで、財務が不適切な状況にあることに気づかずにいる最大の原因は、人々の“認識”にあります。それは「機会費用」と「リアル・オプション」に起因するもので、価値の劣化がどのようなメカニズムで生じるか、の勘所にあるようです。そうした知識の伝播は機軸を知る者と、それ以外の者との間で富を移動させていきます。知識は国境を越え、かつて後進国と目された諸外国の人々がそれを得ることによって、わたし達を凌駕する日が目前にあります。

 

⇒世界は、90年を境に異なる「知識」を軸に動きだしました。知識は、今の時代を――少なくとも二つの、異なる景色に映し出しています。

 

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